SIBは、これまで行政が提供してきたサービスを行政に代わって実施するのではなく、「行政サービスを追加・補完する事業」や「新しい領域における事業」を実施することで、社会的課題の解決を目指します。
SIBは、様々な事業で活用できると考えられますが、あくまでも社会的投資の手法の一つであり、SIBに適さない事業も存在します。
従来の行政サービスは、予防的サービスよりも既に生じている問題への対処的サービスを優先させてきましたが、予防的サービスを実施しなければ、事後に発生するより大きな問題に対する対処的サービスへの費用が継続的に発生します。つまり、問題が発生する前に予防的サービスを実施する方が結果として費用を抑えることができます。
SIBでは、このような現状を踏まえ、予防的サービスへ資金提供した投資家に対して、そのサービスによって問題を未然に防ぎ、本来、行政機関で発生すると想定された費用の節減額から投資家へ還元します。
SIBは、事業が失敗するリスクを行政機関から投資家へ移転するその仕組みから、リスクはあるが高い効果を見込める新しい事業を大規模に実施する前に、実際に効果があるかどうかを確認する目的で行われる実証実験に適しています。SIBによる実証実験により効果が確認された事業は、最終的に事業化、または社会制度に取り入れられることが想定されます。
成果報酬による新しいプログラムの成果と外的要因による成果を区別することが困難な事業、また、作業ベースの支払いにより求める成果を享受できるイノベーションの余地が少ない単純な事業などは、SIBに適していないと考えられます。
SIBでは、成果を検証して支払いが行なわれるまでに時間を要するため、その間、作業ベースの支払いでは不要となる余分な運用コストが必要となり、SIBを利用することは得策ではありません。
SIBは仕組みが複雑であり、組成コストや運用コストが発生します。そのため、SIB以外で資金調達できる場合は、SIB以外の資金調達手法を用いる方が望ましいと考えられます。
既に社会に広く普及している事業については、行政コスト削減の余地及び投資家の利益が少なく、また、多数の実績により作業ベースの支払いでも成果を予測できる等の理由からSIBが成り立たないと考えられます。
逆に事業が広く普及しているにも関わらず社会的課題が解決していない場合、事業に新たな価値を生み出すイノベーションが求められているといえます。
SIBでは、これまでに「若者就労支援」、「子ども・家庭支援」、「再犯防止」、「生活困窮者支援」などの領域で実施されており、これまで投資の対象とされていなかった社会的事業をその投資対象としています。
SIBの対象となる事業は、既に実施されている事業以外にも様々な事業に可能性があり、以下の事業がSIBの対象事業として実施・検討されています。
事業領域 | 具体的な事業内容 |
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若者就労支援 |
若者就労支援、ニート予防、移民就労支援 |
児童・家庭支援
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児童養護(家庭支援、里親・養子縁組支援)、幼児教育等 |
再犯防止
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受刑者再犯防止支援
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生活困窮者支援 |
ホームレス・生活保護者自立支援等 |
高齢者福祉・医療 |
慢性的健康問題予防(糖尿病等)、介護予防、依存症克服支援(薬物等) |
その他 |
動物保護(密漁、殺処分防止等)、自殺予防・防止支援、その他 |